辛口コラム

書評その111
宣伝戦争で卓越した能力を発揮するのは日頃から嘘つきだからだ
なぜ西側列強はシナに同情し支援する罠に嵌まったのか?

フレデリック・ヴィンセント・ウイリアムズ著、田中秀雄・訳と解説
『(増補改訂版)中国の戦争宣伝の内幕(日中戦争の真実)』
芙蓉書房出版

『(増補改訂版)中国の戦争宣伝の内幕(日中戦争の真実)』

 米国の有力シンクタンク「ハドソン研究所」の最新報告に拠れば、中国の抗日戦争80年式典とパレードなるものは「歴史捏造の政治宣伝である」という。
まさに本書の帯の文言にあるように「世界は常に中国の嘘に踊らされている」。
 ハドソン前掲報告では(1)共産党軍は日本軍と戦っていない。(2)「百団会戦」で日本軍4・6万を殲滅したという「戦果」宣伝だが、日本軍の荷駄隊であり、その犠牲者は460人だった。(3)米軍と共産党が協力したのも嘘で、アメリカ人工作員を暗殺していた実態がある。
 さて本書は米国人記者が暴いた「中国の戦争宣伝」の内幕である。
 1938年、アメリカの国際特派員フレデリック・V・ウイリアムズは、満洲・中国・日本を縦横に取材し、中国の巧妙な宣伝戦とソ連の影響力を克明に記録した。その著書が『Behind the News in China』である。
 ウイリアムズが1938年6月19日の「カトリック新聞」に談話は発表して次のように発言している。

 「日本はカトリックの方針のごとく防共政策を以て完全に東洋の平和のために働き、その効果を上げた。世界の新聞に、日本軍がカトリック宣教師を殺害したなどと支那がデマ宣伝をしているが、却って共産支那軍に殺された宣教師は二百三十人に上っている。日本軍に殺された者は一人もありません」(16p)

 それまで、殆ど知られていなかった“もう一つの戦争の姿”を報道した衝撃のルポルタージュを彼はまとめた。
ところが米国は、この著作とタウンゼントの日本の実態を論じた著作を発禁としたばかりか、ふたりを冤罪で起訴し、刑務所にいれてしまった。言論弾圧である。
満州では当時、三十万人もの匪属、山賊、盗賊集団がいて「馬賊」と総称した。関東軍はかれを退治し、山奥へと追い込んで治安が回復された。ところがソ連は宣伝工作を命じ、かれらが盗賊、匪賊らが、じつは「満州の愛国者」であり、日本軍が悪いと倒錯させたフェイク報道が仕組まれ、日本は世界中から批判されるのである。
まことに敵は「宣伝がうまく」、日本は「沈黙は金」の国だから「宣伝が下手くそ」なのである。
 日本が列強の世界史のゲームに主要なプレィヤーとして参加してきたために西洋列強もロシアもアジア人種蔑視の人種差別意識が強いから、我慢がならなかったというのが時代背景にある。

ウイリアムズはこう書いた。

「中国はアジア人の国で、日本は長い付き合いがある。その過去の栄光はもうなく、(支那王朝という)帝国は灰と消え、共和国(孫文らが唱えた)は燃え尽きようとしていた。国の指導者は愚かで、罪深く、貪欲で腐敗しており、国を滅ぼしたのだ。日本はその外部世界と沢山接触していた。中国はそうではなかった。日本は西洋列強のライバルとなった。中国は彼らの奴隷となった。それゆえに日本は自分が一人の味方もいないことを思い知らされた。
 そして中国は、かつて外国人を殺戮し凌奪したという過去も忘れられて、突然同情と援助に値する国家と国民というように持ち上げられたのだ」(37p)
 しかし、
「中国の軍閥は利己的な群れでしかない。彼らは自分のことしか考えず、国家のことなど眼中にない。彼らの力と地位の源泉は持っている軍事力のみである」(61p)。

 正規軍でなく私兵であり、戦闘にはからっきし弱い。だから嘘宣伝にかけて凄い底力を発揮し、日本を悪者にすり替えるのだ。
宣伝戦争で卓越した能力を発揮するのは日頃から嘘つきだからだ。なぜ西側列強はシナに同情し支援する罠にはまったか? いまなお「南京」「731」などの出鱈目に振り回されているのか?
 本書は具体的な手口を鮮やかに解説した一級資料である。

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表紙

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