辛口コラム

書評その105
米中間の消耗戦争は終わらない。
覇権国はひとつ。競合相手はひねり潰すのが「ツキディデスの罠」

田村秀男 著 『米中経済消耗戦争』ワニプラス

『米中経済消耗戦争』

 米中対決、高関税戦争、輸出規制。そして米中協議は90日再延長。
となれば中国は十月に四中全会、同月下旬、韓国でAPEC、おそらくトランプ大統領はその足で北京へ出向き、とりあえずの関税戦争の手打ちを行うだろうと予測される
 だが米中間の消耗戦争は終わらない。
 結論は簡単である。どちらかが倒れるまで米中経済戦争は継続される。理由は至極簡単明瞭で「覇権国はひとつでよい」というのが歴史の原則。
したがって競合相手はひねり潰す。「ツキディデスの罠」の鉄則である。
 田村氏は冒頭でずばりこう言う。
 「トランプ氏の窮極の目標は米国による経済覇権の再確立であり、主敵はグローバル市場の主要分野で急速にシェアを拡大させている中国である(中略)。グリーンランド、カナダの領有は、鉱物資源権益のみならず、宇宙空間を経由する弾道ミサイルなど、中国からの攻撃に対する本土防衛のための次世代ミサイル防御構想『ゴールデンドーム』構築とからんでいる」。
 トランプが重視するのはAIにおける技術主導権である。
 レアアースで中国に譲歩を余儀なくされて、やや押され気味とは言え、米国には切り札がある。ドル交換停止という原爆に類いする最終兵器だ。すでにトランプ大統領は2020年末に香港ドルと米ドルの交換停止を可能とする大統領令に署名しており、いつでも発動可能である。  また同時にトランプは第一次政権のときに「香港自治法」を施行している。これは中国の大手銀行に対し米銀との取引を禁じる八つの手法を列挙した。
 そう、中国寄りの香港行政長官はHSBC銀行口座を凍結されたため、買い物も現金でなしていた。これに米国内の資産凍結という、共産党幹部にとって不都合な措置が盛られている。

 「中国金融とは嘘で塗り固められた壮大な虚構」という意味はGDP参割水増し、不良債権の隠蔽、金融機関の倒産などマイナスの出来事をメディアは一切つたえないし、中国経済の成長率は0%だと本当のことを言うエコノミストは追放された。だれも真実を知らず、本当のことは何も知らされない。
 さてトランプの交渉の奥義とは、「手を混乱させ、予測不能状態をたもつことの重要性を『交渉の芸術』で自ら書いている。「相手に非合理的で気まぐれだという印象を与えて不安にさせ、交渉の場にひきだし、譲歩させる外交戦略」なのだ。
 田村氏の結論はこうである。
 「中露枢軸の分断に腐心するトランプ政権の動きからすれば、米国が中露との間で世界を分け合って仕切る合意はあり得ない。トランプ政権の最優先戦略は、米国の世界覇権の維持であり、あくまでも中国封じ込めである」(141p)
 隋所に挿入されている田村氏独特の分析グラフが光る。

waku

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