辛口コラム

書評その61
上海の観光名所「新天地」の隅っこ、ひっそりと中国共産党第一回大会記念館がある
嘘で固められた歴史改竄の原点が、これだ


石平 著『中国五千年の虚言史』(徳間書店)

『中国五千年の虚言史』

 先週から中国で大騒ぎとなっているのは偽ワクチンである。すでに45万人分が、投与された。いまのところ死人が出ていないが、当局は製薬メーカーの16人を逮捕した。吉林省の怪しげなワクチン・メーカーは、偽薬で大儲けしてきた札付きのブラックと言われた。
 かつては中国製ペットフーズで、米国の犬猫およそ一万匹が死亡したため、爾来、米国では中国製に慎重である。粉ミルクでは中国国内で赤ちゃんの死亡事件が続出した。
日本関連で言えば「毒餃子事件」があった。日本に来る中国人ツアーは必ず日本製の粉ミルクを爆買いした。
 前々から評者(宮崎)も、口すっぱく言ってきたが「中国人は朝起きてから寝るまで、生まれてから死ぬまで嘘をつく」のである。五千年、一貫してそうなのである。
 この本は元中国人だった石平氏だからこそ、「嘘が中国の文化である」と断言できるのである。
そもそも「五千年」という歴史そのものが真っ赤な嘘であり、中国史は、秦の始皇帝から延々と、ひたすら嘘だけが述べられている。

 本書は、それを王朝ごとに、きわめて簡潔に、何が嘘であり、真実が奈辺にあるかを秦、漢、新、後漢、三国鼎立、随・唐、宋、元、明、清、忠仮眠国(中華民国)。そして現代の習王朝までの偽史を適格に暴く。
 生活も出世も、すべてが嘘で塗り固められている。イデオロギーも、文学も、嘘に満ちていて、だから中国は一級の芸術が出てこなくなった。

 なぜこうなったのかを石平氏は次のように解き明かす。
 「日本では『嘘つきは泥棒の始まり』であるが、中国では『嘘つきほど成功する』なのだ。清王朝末期の李宗吾という儒学者は歴代の皇帝や古来の英雄を分析し、1911年から『厚黒学』『厚黒経』といった、乱世を生きる中国四千年の成功哲学についての論考を発表した。(中略)成功の要諦は、『面の皮は城壁より厚く、腹は石炭より黒く生きよ』というものであり、いかに鉄面皮で恥知らずになるか、そしてどこまでも腹黒く、自分の利益のために何でもすることが重要だと説いている」のである。

 いまの中国人が学校で習う嘘だらけの歴史は、共産党がいかに由緒正しく、しかも抗日戦争を戦った主体であり、権力に合法性があるかを徹底的に偽史観の塊で記述している。共産党は匪賊、山賊が本質であり、抗日戦争は国民党が戦ったという真実を語ると「偽史」と批判される。でっち上げの成功例が「南京大虐殺」「731部隊」などだ。
 なにしろ「第一回共産党大会」なるものが、すこぶる怪しいのである。
 上海の観光名所「新天地」にひっそりと中国共産党第一回大会記念館があるのだが、嘘で固められた歴史改竄の原点が、これだ。 この場所は元フランス租界である。会場となったのは李漢俊の自宅だった。評者(宮崎)も、何回か上海にある「中国共産党第一次全国代表大会跡地記念館」を見学したことがある。
 飾ってある金ぴかの銅像、初回参加者十三名のレリーフ、当時、確かに参加はしたが、チンピラでしかなかった毛沢東が、会議で発言しているオブジェも飾られていて、思わず吹き出しそうになる。
 共産党は陳独秀が創立した。この指導者は歴史から殆ど抹消された。
周恩来はこのとき巴里にいて、会議には欠席しているし、戴季陶は、このときすでに党を離れて、日本にいた。
 ならば誰々が参加したのか?。
 李漢俊(東大出身)、李達(東大)、陳公博、包恵僧(陳独秀の代理)、張国寿、劉仁静、陳譚秋、董必武(日本大学)、毛沢東、何淑衝、トウ恩銘、王尽美、周仏海(東大)、この十三人にコミンテルンからマーリンと、ニコリスキーが派遣されていた。
 欠席にもかかわらず陳独秀が委員長となり、役員も決められているが、そこに毛沢東の名前はない。つまり、毛沢東はこの時点でヒラでしかなく、彼の主導権が確立されるのは、鄭義会議以後である。
 さて石平氏は、その後、この創立メンバーの悲運をたどる。
共産党史が決して語らない事実とは、李達はいったん離党し、共産党政権成立後復党するが、「毛沢東を批判したため、文化大革命で惨殺された。李漢俊ものちに中国共産党を離党、国民党に加入したが、国民党の分裂・紛争の中で処刑」となった。
 「陳公博と周仏海は王兆銘政権に参加し、日中戦争でも日本に協力したため、戦後の中国では『売国奴』扱いされた。結局、中国共産党のなかで順調に生き延びたのは、毛沢東と董必武の二人しかいない」のである。
 つまり、共産党などと独自の自主的な政党を名乗るなど僭越であり、実態はコミンテルンシナ支部でしかなかったのだ。
 目から鱗の、真実の中国史は、それならいったいどうなるのだろう?

waku

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